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内容紹介
神宮外苑の次は富士山の破壊! 日本人の心の山である世界遺産富士山に湧いて出た山梨県の「富士山登山鉄道構想」。五合目の大規模開発を伴う計画は建設費1,400億円。どこまで膨らむのか疑わしい予算、一度失ったら戻らない自然を壊すずさんな計画はどこかで聞いたことがあるようなもの。世界の観光の最先端を知り尽くし、世界遺産登録運動の先導役を務めた「富士山学」の権威、国立公園の研究者らが富士山の本当の魅力、「登山鉄道」の危険、無謀さを明らかにする。
開発を抑制し、原生に近い自然が残っていればいるほど、価値が高まり観光客が押し寄せる世界の観光地の最前線を紹介。開発優先で世界の観光地の潮流から立ち遅れる現実、目先の利益を追うことで、かえって本来の価値を損なう日本のあり方を問う。
目次
はじめに富士山登山鉄道計画は行政による富士山の「いじめ」だ
第1章 世界の観光の潮流から遅れる富士山の観光そして日本の観光
第2章 富士山の歴史、その信仰と恵み
第3章 富士山6つの危機と本来の価値
第4章 富士山登山鉄道はなぜ必要ないのか
第5章 富士山鉄道開発の経緯と現計画の問題点
第6章 富士山登山構想の背景にある国立公園満喫プロジェクトとは
第7章 私が考える富士山再生への復活プロジェクト
緊急座談会「富士山を壊すのは誰?」
あとがき 富士山を泣かせるのは日本人の恥だ
プロフィール
渡辺豊博/わたなべとよひろ
1950年秋田県生まれ。静岡県三島市在住。東京農工大を卒業後、静岡県庁に入庁し、農業基盤整備事業などを担当。また、富士山の世界遺産登録運動の先導役を果たす。退職後、都留文科大学教授に就任し「富士山学」などを開講。静岡県庁在職中から、グラウンドワーク三島など数々のNPO法人の事務局長を務める。ほかにNPO法人富士山測候所を活用する会の顧問。グラウンドワーク三島では地元の汚れた源兵衛川の自然回復運動に取り組み清流として甦らせ、観光客増に導いた。その後も、アメリカ、ニュージーランド、イギリスなど世界の先進的な観光地を視察し、情報を発信し続ける。著書に『清流の街がよみがえった』(中央法規出版)、『富士山学への招待』(春風社)、『富士山の光と影』(清流出版)など。自他ともに認める「世界一富士山を愛する男」。
村串仁三郎/むらくしにさぶろう
1935年東京都生まれ。法政大学名誉教授。専門は労働経済論、鉱山労働史、現代レジャー論。国立公園論。主な著書に『賃労働言論―『資本論』第一巻における賃労働理論』(日本評論社)、『日本の鉱夫―友子制度の歴史』(世界書院)、『レジャーと現代社会』(編著、法政大学出版局)、『自然保護と戦後日本の国立公園』『高度成長期日本の国立公園』『現代日本の国立公園制度の研究―国立公園は自然保護の砦かレジャーランド・リゾート地かを問う』(3冊ともに時潮社)など。現在、「富士山鉄道建設に反対する市民の会」代表世話人を務める。