2021年3月24日 本田宏先生 衆議院厚生労働委員会 意見陳述 全文「医療崩壊を止める」

過労死ラインの約2倍の年間1860時間以上の時間外労働をこなす医師が2万人もいるといわれるほど、常態化する医師の超長時間労働。そんな状況を改善する「医師の働き方改革」を実現するため、本田宏先生が参考人として国会で意見陳述をしました。医師不足をいかに解消するかを説いた渾身の〝演説〟です。

 
 

実は私、20年近く日本の医師不足と医療崩壊の問題を訴えてまいりました。国民の方々に日本の医療の現実を知ってもらわなくちゃいけないと思いまして、1500回以上講演をしているんです。全国で。ところが変わらない。今回も欧米に比べて患者数が少ないのに日本の医療が崩壊、瓦解した。なぜでしょうか。

私は正しい診断がついていないからだと思います、医者的に言えば。なぜ日本の医療が崩壊したのか。今日はそのことについてお話したいと思います。実は、私には忘れられない1日があります。2008年4月12日「医療現場の危機打開と再建を目指す国会議員連盟」、超党派の国家議員連盟が発足しました(※2008年4月12日に発足記念のシンポジウムが日比谷公会堂で開かれた)。その場にいらっしゃった方もここにいらっしゃいますね。これで私は、日本の医療崩壊は改善されるに違いない、再建されるんじゃないかと思っていました。ところが、残念ながら今回は医療崩壊です。2015年には『本当の医療崩壊はこれからやってくる』、2021年の2月には『「日本の医療崩壊をくい止める」~日本を安心して生きられる国にするために~』など実は医療崩壊をテーマにした本を4冊出しているんです。しかし、崩壊は止まらなかった。

きょうはまず、それがなぜ止まらなかったのかをここでお話ししたいと思います。今回の「医師の働き方改革」を含めてですね、医師数、その他がどうなのかということで、医師数、タスクシフト(仕事の移管)について主にお話ししたいと思います。

添付した3ページ目の資料(下にアップロード。以下同)をご覧ください。医師もあまり知らないのですが、世界で医学部定員を決めている国というのが少ないんですよ。先生方はご存じでしょうか。日本、カナダ、イギリスおよびニュージーランドです。ということは逆に言えば医師不足を引き起こしてはいけないということですね。国が決めているんですから。

どうしてこういうことになっているのか。4ページ(の資料)です。国会議員の先生の中にも、日本は医学部定員を2008年に増やしたはずだから、もうOECD諸国並みにもう医師が増えているはずだと考えている方も多いと思います。4ぺージの図をご覧ください。OECD諸国の平均と比べて日本は人口10万人当たりの医師数は13万人不足しているんですよ、13万人。

これが医師不足の原因なんですね。詳細は添付している図をご覧いただきたいんですけど、このように医師が不足している日本で、2023年度から医学部定員を削減するということになったんですよ。

私が今日なぜこのようにハイテンションで話しているのかっていうことは、ご理解いただけると思います。

5ページ目の図をご覧ください。

これは私が10年前に毎日新聞の「私の社会保障論」という連載に書いた記事です。10年前にすでに日本の感染症学会は、日本にはすでに感染症専門医が3000人から4000人は必要だと言っている。しかし10年前には約1000人しかいなかった。去年の1月で1500人ですよ、皆さん。3000から4000人必要だと言っているのに千500人ですよ。だから感染症指定病院でも感染症専門医がいないという、びっくりするような状況になっているんです。しかし、このようなことはメディアではほとんど報道されていない。ベッドが足りないだけではないんです。専門医がいないんです。

6ページ目は集中治療医。新型コロナで重症患者さんにはエクモ、人工肺で治療をされているのは皆さん、ご存じだと思います。そういう重症者を見る人も、集中治療学会によれば2650人足りない。それはそうです、13万人足りないんですから。

ところが、ここで特筆すべきは、ドイツは8千人いるんです、集中治療医は。日本は1850人しかいないんです。人口8千万人のドイツ並みにするとしたら1万人足りないんですよ、日本は。

それはそうです、13万人足りないんですから。これは感染症専門医だけじゃない、集中治療医だけじゃない、救急その他すべて足りないんですね。だから「医師の働き方改革」をしても(適切な労働時間を)守れないんですよ。守れるわけはありません、13万人足りないんですから。ちょっと今日はしつこいですけど、せっかくの機会ですからお話ししたいと思います。

次、7ページ目をご覧ください。

その私の懸念がこのグラフに当たっています。働き方改革で出たデータ。日本の20万人の勤務医の調査でなんと4割、8万人が過労死ラインで働いているんですよ、皆さん。そのうちの1割の2万人が過労死ラインの2倍の労働時間を超えている。これが日本の現実で、それなのに2023年度から医学部定員を削減するんですよ! 大丈夫なんですか? と私は聞きたい。誰も答えてくれないけど。きょうはそういう意味でやりがいがあるんですね。国会議員の先生方がこれを知らないのではどうしようもないわけですから。ご存じだとは思いますけど。

8ページ目の資料をご覧ください。これはよく言われる各都道府県の人口当たりの医師数です。日本は先ほども言いまして、しつこいんですがOECD平均と比べて13万人足りないんですが、都道府県のなかでも多い徳島県ですら、京都府も高知県もOECD平均に達していないんです。日本は世界一の高齢社会ですよね。OECDより多くても罰は当たらないでしょう。でも13万人足りない。

1都3県の数字をご覧ください。東京はまだいいのですが、医師が少ないでしょう。だから1都3県が緊急事態宣言を解除するのに時間がかかったんです。

ちなみに今日はスライドを用意していませんが、1都3県は看護師もベッド数も少ないです。人口の一極集中でそうなってしまった。緊急事態宣言が解除できなくて経済はどうする? ベッドだけ用意してもベッドは自動的に治療はしてくれないんですよ。医師や看護師がいないと無理なんです。妙なテンションになって申し訳ございません。せっかくの国会審議が……。

9ページ目、ご覧ください。日本の医師数をOECD並みにするとしたら約46万人必要になります。次の図を見ると厚労省の医師の需給検討会ですと、36万~37万人で需給を満たすということになっている。これはおかしいでしょう。

な~んでか、これは10ページ目の図をご覧ください。すみません、今日はもっとまじめにやるつもりだったんですけど。いつもは一般の人を相手にしているものですから。本当はもっとダジャレを入れて楽しくやっているんです。今日はまじめにやっております。

10ページ目、これは私はびっくりしたんですけれども、世界の医師数のデータです。いちばん下の赤い線、日本の人口1000人当たりの医師数。その上の赤い線は加重平均です、世界の国々の。

さらにその上に一つ星がありますね。これは単純平均です。OECDはずっと単純平均を使ってきたんです。単純平均というのは、その横に解説を書いてありますけど、各国の人口当たり医師数を足して、国の数で割るのが単純平均。加重平均というのは世界の国の医師数の和を加盟国人口を足した数字で割るんですよ。医療体制が違うところでそんな出し方をして意味があるんですか?

医療体制が各国で違うのにそんな出し方をして意味があると思いますか、みなさん。加重平均、だから私はこんなのおかしいと、講演会では「オレンジジュース平均」と言っているんです。すみません、言わないほうがよかった。果汁平均、いや加重平均。

11ぺージ目をご覧ください。これが今日の肝です。上のグラフ。これは世界の人口1000人当たりの医師数。OECD諸国と比べても少ない。ビリのほうですね。伸び(医師数の推移)もビリのほう。

11ページの下の図は、今日私がいちばん強調したいところです。人口10万人あたり医学部卒業生は世界最低。右の推移もみてください。伸びていないでしょう。1年、半年のOECDの数だけを見て、10年後にそこに追いつくかと言っても意味がないでしょう。世界は(医師数を)増やしているんだから。医療が進歩すれば医者は必要なんですよ、皆さん。

世界でも医学部の卒業生数が増えていない日本で、2023年度から医学部定員数を削減するんですよ。それで医師の働き方改革なんかできるわけがないでしょう。

12ページ目。

医師不足を放置すると、どうなるか。私が長年訴えたかったことです。

①感染症や大災害時の医療崩壊・経済崩壊

皆さん、今回、医療が崩壊すると経済が崩壊するということが、もうわかったわけですね。医療は「命の安全保障」であるだけではなくて「経済の安全保障」でもあるんです。

そこをちゃんとしておかないと、国の安全保障を考えるだったら、医療もちゃんとしないとダメよダメダメ。あ、すみません。だんだん普通の調子が出てまいりました。申し訳ありません。ちょっと真面目にやります。

(②~⑥は資料参照)

13ページ目。じゃあどうしたらいいのか。

「タスクシフト」をしっかりする。フィジシャンアシスタント(医師補助職)などアメリカでは医療を支えるいろんな職種があるということです。日本と違って。

14ページ目。

私はフィジシャンアシスタントの導入を訴えているんです。

下のグラフをご覧ください。アメリカでは日本にいないような医師と一緒に働くフィジシャンアシスタントがいて、なんとこの10年間で8万人から12万人に増えています。

今日本はタスクシフトを、多職種連携で特定看護師さんなどにお願いしようとしていますが、皆さん日本は看護師さんも少ないんですから。その少ない看護師さんに多職種連携をやるのは無理よ無理です。

15ページ目をご覧ください

これはタスクシフトでどんなことをやっているか解説しています。

最後のページです。

最後のスライド図をぜひご覧いただきたい。これはOECDの1000人当たりの医師数ですね。ここに星印で今言ったフィジシャンアシスタントを導入している国を並べてみました。

ドイツ、オーストリア、ニュージーランド、オランダ、イスラエル、アイルランド、イギリス、カナダ、アメリカ。ドイツはOECD,G7で人口当たりの医師数がいちばん多い国です。

10年前にフィジシャンアシスタントを導入しています。

日本はまだ導入していません。これで医学部定員を削減して、実効性のあるタスクシフトができる人数を増やさなかったらダメでしょう。

本当に、皆さん、なぜ加重平均を使って医師不足を矮小化しているのか、なんの目的なのかをぜひ皆さんに検証してほしい。日本のいちばんの問題は、問題が起きたときにしっかり検証しないことですよ。だから何回でも同じ過ちを繰り返すんです。というわけで今日は私も講演でのダジャレの過ちを繰り返してしまいましたけど、これで終わります。どうもありがとうございました。

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